他の先進諸国と同様に、近年日本においても拒食症や過食症が増加しています。摂食障害は思春期から青年期にかけての若年女性が比較的高率に罹患し、かつ非常に高い死亡率であるにもかかわらず社会問題としての認識は依然として低く、その対策は不十分なままです。摂食障害の病因や病態は複雑で、治療開始から回復・社会復帰に至るまでに、生物・心理・社会といった多方面からのアプローチが必要です。現在の日本の医療において、摂食障害に対する十分な診療システムは構築されていませんが、今後も全てを医療の枠組みのみで扱っていくことは有効ではありません。
自助グループや家族会も各地で徐々に組織されていますが、摂食障害の専門的な知識を持つスタッフがいない形での運営は、不安定となりやすい問題もあります。社会復帰に向けて当事者が継続的に利用でき、摂食障害の専門家がリードする形で、明確な方向性をもった施設を設立することは、医療者・当事者・家族それぞれから望まれています。一般的な精神障害者の通所型障害福祉サービスは、疾患特性の違いもあるため利用が難しく、摂食障害を専門的に扱う通所支援施設の設立が必要と考えられますが、関西にはそのような施設は存在しません。
私たちは上記のようなニーズを受け、平成23年に京都で摂食障害者を支援するNPO団体「SEED(しーど)きょうと」を立ち上げました。立ち上げ後より、「きょうと摂食障害家族教室」を開始し、平成24年には家族会「らくの会」の運営を開始しました。毎年、一般市民向けのシンポジウムや医療福祉関係者向けの講習会なども行いながら、平成25年には当事者の利用できる通所支援施設「SEEDテラス」を開設しました。平成27年10月15日に「SEEDきょうと」はNPO法人となり、平成28年度は摂食障害者の通所支援施設を「プティパ」とし、日本財団からの助成によりスタッフを雇用して本格的に施設運営を拡大しました。平成29年度も引き続き日本財団の助成を得てそれを継続、そして平成30年4月1日に、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業(就労継続支援B型事業所)として京都市から指定を受けることができました。さらに令和3年4月から、訪問看護ステーション「らぐれーぬ」を開設し、プティパへの通所が困難な方に対して、アウトリーチによる支援を導入することが可能となりました。
「摂食障害からの回復のために、手を取り合ってできること全てを」
今後も、当事者の方・ご家族・支援者で手を取り合ってできること全てをSEEDきょうとで取り組み、摂食障害者およびその家族に対する包括的な地域支援活動を発展させていきたい所存です。これからも、SEEDきょうとの活動に、ご理解とご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
特定非営利活動法人SEEDきょうと
理事長 水原 祐起